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【感想】悪童日記|荒廃した世界で生きた少年たちの記録

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こんにちは。ニャンさん@nyankodearuです。

 

アゴタ・クリストフの名著『悪童日記』。
以前から気になりつつも、なかなか手を出せなかった小説。ようやく読了することができました。

 

独特の淡白な文体で綴られた本作品は、なにかこう、クセになる…妙な味があり、半日で一気に読み終えてしまいましたね。素直に面白かったです。

 

以下ネタバレありのあらすじ&感想

 

悪童日記 あらすじ

戦時中、幼い双子の兄弟はおかあさんに連れられて、〈小さな町〉のおばあちゃんの元にやってきた。暮らしていた〈大きな町〉では食料が不足していたからである。こうして二人はおばあちゃんとともに暮らすことになった。

 

おばあちゃんは、かつて夫を毒殺したと噂され、周囲の人々からは〈魔女〉と呼ばれ忌み嫌われていた。双子たちにも労働をさせ、仕事をしないと食料を与えない。

 

戦時中の劣悪な生活環境と、荒廃した人々のこころと接しながら、双子たちは強く生き抜く力を身につけていく。

 

悪童日記 感想

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本作品の舞台は明記されていませんが、訳注で補足されているため、それを頼りに時代背景を解釈しました。

 

著者のアゴタ・クリストフはハンガリー出身で、双子がもともと住んでいた〈大きな町〉は首都のブダペスト、おばあちゃんの家がある〈小さな町〉はオーストリアとの国境付近にあるクーセグという田舎町がモデルになっていると推測されています。

 

当時(第二次世界大戦)のハンガリーはドイツにより占領され、ユダヤ人は強制収容所に連行、またソ連が進軍してきている…という、そんな状況でした。作中であちこちに死体が転がっている描写も納得できますね。

 

さて、本作品の内容に関してですが、なんとも具体的な感想を述べにくい…というのが正直なところ。双子はなかなかに残酷な行為を繰り返すのですが、あっさりした文章で表現されているので、さくさく読み進んでしまうのですよね。

 

この作品は双子の「日記」という形式で書かれたものですが、日記の記述法にはルールがあり、これが非常に重要となります。

 

ぼくらが記述するのは、あるがままの事物、ぼくらが見たこと、ぼくらが聞いたこと、ぼくらが実行したこと、でなければならない。

引用:アゴタ・クリストフ(2001年).悪童日記 早川書房

 

双子たちは淡々と「事実」を書き連ねているのですね。

 

また、双子はまるで感情などないかのように描写されているため、「機械的で冷酷」な印象を持ってしまうかもしれませんが、けしてそうではありません。

 

感情を定義する言葉は非常に漠然としている。その種の言葉の使用は避け、物象や人間や自分自身の描写、つまり事実の忠実な描写だけにとどめたほうがよい。

引用:アゴタ・クリストフ(2001年).悪童日記 早川書房

 

意図的に感情を表現することは避けていたということです。事実、双子の感情・信念のようなものを感じ取ることができる行動がいくつかありました。最も顕著だったのが、司祭館の女中を殺害しようとした時でしょうか。

 

性的な見返りを目的に、双子の洗濯や入浴の支援をしてきた女中。彼女は強制収容所に連行されるユダヤ人たちを侮辱し、その代償として双子に命を奪われかけました。

 

ここでも直接的な双子の感情描写はありません。女中がユダヤ人を侮辱し、そのことを双子が気にする様子があった、ただそれだけです。

 

軽く読み飛ばしていたら、「え?なんで殺したの?」と思ってしまうほどあっさりとしたエピソードでしたが、双子が自分や他人の利になること以外で罪を犯したのは、これだけです。ここに双子なりの信念のようなものは感じ取ることができます。

 

対比的に、連行されるユダヤ人たちに対しリンゴを与えようとしたおばあちゃんの姿も描かれています。おばあちゃんはケチで不潔で乱暴で夫を殺害した疑い(事実っぽい)がある、周囲から忌み嫌われている人物ですが、彼女もまた信念を持つ人物で、双子のよき理解者ではあったのでしょう。

 

りんご騒動でけがをしたおばあちゃんに対し、双子がそばに寄り添う姿が描写されているし、また最後におばあちゃんが毒死する手助けをすることも躊躇していました。

 

このように、ところどころで双子の人間味、子供らしい純粋さも見て取れるのが、この『悪童日記』の面白いところだと感じましたね。

 

当時のハンガリーの荒廃した様子をまざまざと見せつけられ、悲惨な出来事をさらっと語る本作品。抱く感想も様々でしょう。

 

個人的に気になったのが、どうでもいいかもしれませんが、登場人物に異常な性癖を持つ者が多すぎじゃないですかね?
司祭、女中、将校…。荒んだ環境ならば、こんなもんでしょうか(気になる)。

 

私は現時点では『悪童日記』のみ読了していますが、実はこの物語には続きがあり、第二作目『ふたりの証拠』、第三作目『第三の嘘』も発行されています。こちらも読んだらまた感想を書きますね。